刑事訴訟法の基本判例
このサイトは刑事訴訟法を学ぶ上で必要不可欠な重要判例を(判旨だけでなく事案・下級審の判断・解説も含めて)コンパクトにまとめて紹介しています。日ごろの学習だけでなく、法学部の定期試験・法科大学院入試(ロー入試)・新司法試験対策(刑事系第二問や択一対策)、特に直前期における知識の最終確認に有効なサイトです。
タイトル 任意同行と逮捕
日付 富山地裁決定S54.7.26
事案の概要・経緯
AM7.15頃 出勤しようとした被疑者を警官が制止、同行を求められる、被疑者、警察の車両で署へ
AM7.40頃 署に到着 取り調べ開始
数回の休憩をはさんで、翌日零時過ぎまで取り調べ
取調室には取調官と立会人(が常に被疑者を監視)、用便以外に被告人は取調室から外に出ない、用便時も立会人が同行
PM10.40逮捕状の請求
翌日AM0.20逮捕執行
同日PM3.30検察官へ送致
翌日PM5.15拘留請求 しかし先行する逮捕に重大な違法があるとして却下、検察側準抗告
判旨 準抗告
棄却
取調べ状況から、夕食時には帰宅したいと被疑者は思っていたと推察できる
なのに、意思の確認や自由に退室したり外部との連絡を取る機会を与えたと認めるに足りる事情がない
事実上の看守付きの、深夜にまで及ぶ長時間の取調べの場合、被疑者から帰宅・退出の申し出なくても、他の特段の事情がない限り、任意の取調べは不可
本件では午後7時以降の取調べは事実上の逮捕
→拘留請求は、実質的逮捕時から計算しても制限時間は遵守している
しかし、五時間もの間逮捕状なしの逮捕という、令状主義違反の逮捕、それ自体が重大な瑕疵、制限時間遵守していても治癒しない∵もし認容すれば令状なしに終日被疑者を事実上拘束して罪障隠滅を防止しつつ、フリーハンドでの捜査が可能になり、令状主義の根本を害する結果になる
解説・関連情報
実質的逮捕=逮捕と同一視できる程度の強制力が加えられた場合
例、四人の警官が被疑者を取り囲みそのままタクシーに乗せ、警官らが同乗して署まで連行
判断要素
同行を求めた時間場所 夜や遠い場所は×
同行の方法態様 警官の数が多い、平穏ではない態様、監視厳しいと×
同行の必要性
被疑者の属性 年齢や性別、職業
同行後の取調べ時間・場所方法監視状況 早朝・深夜・長時間、拒否しようと思っても拒否しにくいような監視状況・取調官の数は×
被疑者の対応状況 明白な拒絶の意思があれば×、あいまいでもあやしい
捜査官の主観
逮捕状の用意の有無 用意されていると断りにくくなる上、時間稼ぎの疑いが生じるので×
刑事訴訟法重要判例
- 最決H1.7.4長時間の取調べ
- 最決H10.5.1電磁的記録媒体の包括的差押さえ
- 最判H11.3.24接見交通・接見指定
- 最決H14.10.4令状提示前の立ち入り
- 最判H15.10.7一事不再理効と訴因
- 最判H15.2.14違法収集証拠排除法則と毒樹の果実
- 最判H2.6.27捜索差押さえ時の写真撮影
- 最決H5.1.29逮捕した場所から500mないし3km離れた所轄警察署にて220条に基づく捜索・差し押さえ
- 福岡高裁判決H5.3.8220条に基づく捜索・差し押さえ
- 最判H6.9.16採尿令状で検査のための場所に連行できるか
- 最決H6.9.8捜索令状の範囲
- 最決H8.1.29準現行犯逮捕
- 最判H9.9.16職務質問のための実力の行使
- 福岡高裁S42.3.24一罪一拘留の原則
- 京都地裁決定S44.11.5現行犯逮捕
- 最判S44.12.24写真撮影
- 東京高裁S44.6.20220条に基づく捜索・差し押さえ、「逮捕の場所」とは
- 東京地裁決定S47.4.4再逮捕・再拘留の要件
- 最判S51.11.18令状の差し押さえるべき物の範囲は概括的な記載
- 最判S51.3.16強制処分と任意処分の限界
- 最判S53.6.20所持品検査 米子銀行強盗事件
- 最判S61.4.25違法収集証拠排除法則
- 富山地裁決定S54.7.26任意同行と逮捕
- 東京高裁判決S54.8.14実質的逮捕の違法性
- 最判S55.10.23強制採尿
- 最判S59.2.29宿泊伴う取調べ 高輪グリーンマンション殺人事件
参考文献 刑事訴訟法判例百選
主要法律雑誌
法学教室(25%off) The Lawyers(ザ・ローヤーズ) ジュリスト(7%off) 法学セミナー 会社法務A2Z Lexis判例速報 Lexis企業法務 法律時報 インターナショナル・ローヤーズ 知財研フォーラム 法律のひろば 労働判例 その他の法律雑誌 |
このサイト・表記法について
当サイトはリンクフリーです
- 最判=最高裁判所判決
- 最決=最高裁判所決定
- → 順接の接続詞(したがって、よって、ゆえに)
- A=B AはBである
- A≠B AはBではない