刑事訴訟法の基本判例
このサイトは刑事訴訟法を学ぶ上で必要不可欠な重要判例を(判旨だけでなく事案・下級審の判断・解説も含めて)コンパクトにまとめて紹介しています。日ごろの学習だけでなく、法学部の定期試験・法科大学院入試(ロー入試)・新司法試験対策(刑事系第二問や択一対策)、特に直前期における知識の最終確認に有効なサイトです。
タイトル 長時間の取調べ
日付 最決H1.7.4
事案の概要・経緯
殺人事件の被害者と親密だった被告人、任意同行を求められる
PM11.00すぎに署到着
三十分後から警官数名による取調べ、冒頭で協力を約束
そのため徹夜で取り調べ、ポリグラフも実施
翌日AM9.30過ぎ、自白を始める
被告人、上申書の提出を求められて、PM2.00頃までに六枚の上申書を書く
強盗殺人の疑いが生じて、さらに取り調べ
PM4.00頃から一時間で強盗殺人を認める旨の上申書を書く
二通の上申書を疎明資料として逮捕状請求
PM9.45通常逮捕
一審高裁ともに、無期懲役
被告人、取調べは任意捜査の限度を超える違法捜査で、それに基づく供述証拠に証拠能力ないとして上告
判旨 上告棄却
事案の性質、被疑者に対する容疑の程度、被疑者の態様等諸般の事情を勘案して、社会通念上相当と認められる方法態様限度において、任意捜査の一環としての被疑者に対する取調べは許容される
解説・関連情報
最決S59.2.29
本件取調べ特段の事情がない限り是認できない。しかし、本件では被疑者の承諾がある。長時間の取調べは殺人+窃盗という自白が証拠と矛盾し虚偽であると判断したため、強盗殺人の疑いで取り調べを続けた結果にすぎない。被告人は帰宅の意向、取り調べの拒否、休息の申し出をしていない。かつ虚偽の供述をする態度をしていることから、意識が朦朧としていたとはいえない。
→社会通念上任意捜査として許容される相当な限度を逸脱していたとは言えないので、自白に任意性あり
批判
最決S59.2.29への批判
任意取調べで問題となる意思決定の自由、比例原則の適用される侵害・制約の程度は考え難い
本決定
特殊事情をあまりに安易に認定している
取調べの承諾≠鉄や取調べの同意
被疑者を客観的に不当な取調べから保護しなければならないのに、捜査上の必要性・脱法意図の欠如を理由に取り調べを許容している。
心理的に被疑者は抗弁をいえない状態にあったのではないか
取り調べをする緊急の必要性もない
刑事訴訟法重要判例
- 最決H1.7.4長時間の取調べ
- 最決H10.5.1電磁的記録媒体の包括的差押さえ
- 最判H11.3.24接見交通・接見指定
- 最決H14.10.4令状提示前の立ち入り
- 最判H15.10.7一事不再理効と訴因
- 最判H15.2.14違法収集証拠排除法則と毒樹の果実
- 最判H2.6.27捜索差押さえ時の写真撮影
- 最決H5.1.29逮捕した場所から500mないし3km離れた所轄警察署にて220条に基づく捜索・差し押さえ
- 福岡高裁判決H5.3.8220条に基づく捜索・差し押さえ
- 最判H6.9.16採尿令状で検査のための場所に連行できるか
- 最決H6.9.8捜索令状の範囲
- 最決H8.1.29準現行犯逮捕
- 最判H9.9.16職務質問のための実力の行使
- 福岡高裁S42.3.24一罪一拘留の原則
- 京都地裁決定S44.11.5現行犯逮捕
- 最判S44.12.24写真撮影
- 東京高裁S44.6.20220条に基づく捜索・差し押さえ、「逮捕の場所」とは
- 東京地裁決定S47.4.4再逮捕・再拘留の要件
- 最判S51.11.18令状の差し押さえるべき物の範囲は概括的な記載
- 最判S51.3.16強制処分と任意処分の限界
- 最判S53.6.20所持品検査 米子銀行強盗事件
- 最判S61.4.25違法収集証拠排除法則
- 富山地裁決定S54.7.26任意同行と逮捕
- 東京高裁判決S54.8.14実質的逮捕の違法性
- 最判S55.10.23強制採尿
- 最判S59.2.29宿泊伴う取調べ 高輪グリーンマンション殺人事件
参考文献 刑事訴訟法判例百選
主要法律雑誌
法学教室(25%off) The Lawyers(ザ・ローヤーズ) ジュリスト(7%off) 法学セミナー 会社法務A2Z Lexis判例速報 Lexis企業法務 法律時報 インターナショナル・ローヤーズ 知財研フォーラム 法律のひろば 労働判例 その他の法律雑誌 |
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- 最判=最高裁判所判決
- 最決=最高裁判所決定
- → 順接の接続詞(したがって、よって、ゆえに)
- A=B AはBである
- A≠B AはBではない