刑事訴訟法の基本判例

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タイトル 職務質問のための実力の行使

日付 最判H9.9.16

事案の概要・経緯 
 雪道にて、被告人、覚せい剤使用を疑わせる言動・自動車運転。警官、被告人の自動車を止めるよう求め、被告人自動車を止める(am11.10)
 警官、職務質問開始。被告人の自動車からエンジンキーを抜き、取り上げる
 署から前科ありと連絡受ける。
 pm5.43まで職務質問継続
 被告人、署への任意同行拒否
 警官、車にかぎをかけさせるために被告人にキーを渡す
すると、被告人、車に乗ろうとする。警官、両脇から抱えて阻止。
 pm5.43、被告人の身体等に対する捜索差押許可状・強制採尿令状(これらはpm4.20ごろに請求、pm5.2頃に発付)の執行

 一審 キーを取り上げ返還しない=現場を離脱することを事実上不可能ないし著しく困難にする行為、事実上の身体拘束、しかし任意捜査として許される有形力行使
 控訴審 約六時間の留め置きは被告人の意に反するとして違法、しかし程度はきわめて強いとはいえない

判旨 
職質開始当時、被告人の覚せい剤使用を疑わせる言動あり、かつ雪道で滑りやすい
 →キーを取り上げる行為 警職法2-1に基づく職務質問を行うため停止させる方法として必要かつ相当(かつ、道交法上、交通の危険防止のための必要な措置)
 その後六時間以上の間現場に留め置く行為=任意同行求める説得の限度を超え、被告人の移動の自由を奪う点で任意捜査としての許容範囲を超えるので、違法

 しかし、職務質問の過程での有形力の行使=キー取り上げる・返還しない、車に乗り込むのを阻止=あまり強くない・運転させないための必要最小限度の行為
 かつ、交通安全の点から運転阻止の必要性が高かった
    被告人がかたくなに任意同行拒否→説得長時間になったのは仕方ない
    当時の状況下で、警官に違法な留め置きをする意図なし

 →違法だけど、違法の程度は令状主義の精神を没却する重大なものではない
解説・関連情報 
 批判 六時間半の留め置き(最判は任意捜査の範囲として扱う)は、実質的な逮捕ではないか、被告人の行動の自由を奪った点が問題点のはず、任意捜査の範囲を拡大した

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