刑事訴訟法の基本判例

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タイトル 所持品検査 米子銀行強盗事件

日付 最判S53.6.20
 
事案の概要・経緯 
  PM2.00ごろ、銀行強盗事件発生・犯人(四人組)逃走の無線連絡、
翌日AM0.10ごろ 検問に手配人相に似た若い男二人の車来る
 職質開始、二人とも黙秘。警官、下車させて質問するが、返答拒否
 持っていたアタッシュケース・ボウリングバッグの開被を拒否
 そこで、署に同行させる
 バッグ類の開被を繰り返し要求するも、拒否
AM1.40ころ、承諾ないまま、バッグのチャックを開けると、大量の紙幣
 かぎのかかったケースをこじ開けると、強盗にあった銀行の帯封をした札束を発見
 そこで、二人を緊急逮捕
被告人の主張、開被行為は違法なので、差し押さえた紙幣に証拠能力はない

判旨 
 上告棄却
警職法2-1「停止させて質問することができる」
 所持品検査は質問と密接に関連し、質問の効果あげるために必要かつ有効な行為なので、同規定により職務質問に付随して行える場合がある
 原則、所持品検査は、任意捜査である職質の付随行為なので、所持人の承諾が必要
 しかし、承諾なしには一切不可では、行政警察目的の達成不可
 →捜索に至らない行為で、強制にわたらない限りは、承諾なしの所持品検査は可
 しかし、常に可ではない(憲法35との関係で)
 要件、限定的な場合において、所持品検査をする必要性、緊急性、これによって侵害される個人の法益とこれによって実現される公共の利益の権衡などを考慮して、具体的な状況において相当と認められる限度においてのみ許容
  あてはめ
 バックの開被=銀行強盗事件という重大な事件発生し、犯人検挙か急務のときに、深夜の検問にひっかかった被告人らが犯人である疑いが濃厚で、職質に対して黙秘を貫き、所持品の開被を拒否するなどの不審な行動を取り続けたため、両名の容疑を確かめる緊急の必要からなされたもの、反面、開被行為自体は施錠されていないチャックを開被して内部を一瞥しただけ、これによる法益侵害は小さい、これらの経緯からして行為は相当と認められる行為→警職法上適法
 ケースのこじ開け=すでに緊急逮捕できる要件あり、極めて接着した時間内に緊急逮捕手続がなされているので、緊急逮捕に付随する捜索と同視できる →証拠能力あり

解説・関連情報 
 もし、こじあける方が先だったら、結論は大きく変わっていたでしょう。
 関連事件 最判S53.9.7  事案 覚せい剤中毒の症状がある被疑者に職質、上着のポケットを外側から触れると、刃物でなはい何か硬い物の感触  不服な態度を示す被疑者に告知してからその中の物を取り出す→注射器と覚せい剤発見、逮捕・差押さえ  判旨 承諾なしにポケットの中に手を入れて物を取り出す=一般にプライバシー侵害の程度が高い行為・捜索に類似する態様の行為→相当なものとは言えないので、所持品検査の範囲を超えたもの→差押さえも違法  しかし職質の要件具備、所持品検査の必要性・緊急性はあり、認否を明確にしていない→許容範囲をわずかに超えたものにすぎない  かつ、令状主義を潜脱する意図なし→証拠能力はある  

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